2009年12月24日

建具屋さんがつくれる木製防火戸第一弾試験合格

NPO法人家づくりの会の方々と、21年度国土交通省地域木造市場活性化推進事業の補助金を獲得して、スギでできた片引き防火戸の開発を進めています。

その第一弾として、本日、はめ殺し窓の性能評価試験を実施し、無事合格しました。町の建具屋さんがつくれるスギとガラス(今回は網入りガラス)だけでできた防火戸です。今後、性能評価書の発行後、国土交通大臣認定申請し、大臣認定書を取得すれば、建築基準法の防火設備に位置づけられます。

準防火地域・防火地域の建物(耐火建築物、準耐火建築物、防火木造など)の延焼のおそれのある部分の外壁開口部に使うことができます。

従来、木製防火戸は、ある特定のメーカーが大臣認定を取得し、供給をしていましたが、今回の試みは、防火に関する教育を受けた町の建具屋さんがつくれる木製防火戸という点で、これまでの木製防火戸とは異なっています。どのような運用にするかは、家づくりの会の方が決められますが、広く一般に普及できる方法を検討していくことになると思います。

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2月には片引き戸の性能評価試験を受ける予定で準備を進めています。どこにでもある木材と部品、簡単に入手できるガラスでつくれる木製防火戸の実用化を目指していきたいと思います。

平成21年12月24日
安井昇
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2009年03月02日

スギの片引き防火戸実験

 今年度、設計者の集まりであるNPO家づくりの会(会長:川口通正氏、今回の事業の責任者:泉幸甫氏)が、申請者となり、国土交通省地域木造市場活性化推進事業の補助金を獲得して、スギでできた片引き防火戸の開発を進めています。まち場の普通の建具屋さんが少し教えてもらえれば、つくれる木製防火戸を目指しています。

このプロジェクトでは施工の立場の協力者として、チルチンびと「地域主義工務店」の会も加わっています。

 建築基準法によると、延焼のおそれのある部分の外壁開口部は、防火設備を設ける必要がありますが、この防火設備には20分間の炎を遮る性能(遮炎性)が必要となります。

これを、普通のスギとガラスと発泡材(火災時に建具の隙間を埋めるもの、昔のへび花火のようなもの)だけで、つくろうというものです。火災時にスギが約1mm/分程度しか燃え進まないことを利用して、目標性能を達成したいと考えています。

 これまで、7体の約1m四方の小型試験体を使った試行錯誤の実験の末に、20分間の遮炎性を確保できる仕様があきらかになったので、今日、約W1.8m×H2.2mの大きなサイズの片引き戸で加熱実験を行いました。

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[20分加熱後の裏面の様子(火炎の貫通はなかった)]

結果は、屋外火災に対して、20分間、燃え抜けることなく、遮炎性を確保できました。

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[20分加熱後の表面の様子(きれいに炭化層が形成されている)]

さて、今回は網入りガラスを使用しました。網入りガラスは、加熱開始後1-2分でバリバリとひびが入りますが、網があることでガラスが脱落することを防止し、その結果、火炎の貫通を防止します。

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[加熱中の網入りガラスの様子(ひびは入るが脱落しない)]

今後、建具サイズやガラスの仕様を変化させて、20分間の遮炎性を確保できる仕様を確認していく予定です。

来年度の国土交通省地域木造市場活性化推進事業(H21.3.6応募締め切り)にも応募して、継続して開発を続けたいと思っています。

平成21年3月2日 安井 昇
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2009年01月22日

木材あらわし屋根の準耐火試験に合格

 本日、数年前から、エムズ建築設計事務所の三澤康彦さん、岐阜県立森林文化アカデミーの三澤文子さん、協同組合レングスさんらと進めてきた、スギ3層パネル(Jパネル)による準耐火構造の屋根の性能評価試験に合格しました。

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[試験体の加熱面の様子]

 これまで、準耐火構造といえば、せっこうボードを用いるのが一般的でしたが、今回、合格した仕様は、木材(スギなど)だけで構成されており、おそらく日本初だと思います。

 これで、準防火地域の3階建て住宅の屋根を室内から見て木材あらわしでできることになります。軒裏の準耐火構造には垂木・野地板あらわしの仕様がH12建設省告示第1358号に位置づけられているので、それと組み合わせれば、屋根全体を木材だけてつくれることとなります。このJパネルは水平剛床をとれるので、これを野地板に使えば、構造性能・防火性能をあわせもつことになります。

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[加熱中の試験体上部の様子]

 屋根の準耐火構造には、30分間、壊れない(非損傷性)ことと、炎が貫通しない(遮炎性)ことが求められます。木材は外部から加熱を受けると表面に炭化層(断熱材の役割をする)を形成するので、内部への熱の侵入が低減され、厚さがあるとなかなか燃え進みません。今回のような板材では0.8〜1.0mm/分であることが知られています。この性質を上手に利用して所定の防火性能を確保したわけです。

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[真剣に計測モニターをのぞき込む関係者(中央が三澤康彦さん)]

 今後、試験を実施した性能評価機関内の性能評価委員会での評価を経て、国土交通大臣認定の申請、大臣認定書の取得と進んで行く予定です。そうなれば、実際の建物に使えるようになります。

 今回の一連の防火技術開発は、三澤康彦さん、三澤文子さんを中心に、平成18-19年度国土交通省 住宅・建築関連先導技術開発助成事業費補助金「国産杉三層クロスパネルによる準耐火構造仕様の開発」、H20年度国土交通省 地域木造住宅市場活性化推進事業費補助金を獲得して、まずは様々な仕様での実験を繰り返し、今年度、大臣認定取得のための性能評価試験にこぎつけました。そのなかで、安井は防火技術指導など中心的な役割をさせていただきました。設計者と研究者がチームを組むことで、デザインと性能を同時にもつ新たな仕様を開発できる、よいモデルケースになったと思います。

 さて、来月は、木材あらわし床の準耐火構造の性能評価試験も控えています。これに合格すれば、準耐火建築物の床・屋根・軒裏・柱・はり(柱とはりは燃えしろ設計する)を木材あらわしとして設計できることになります。これまでできなかったことが、先駆的な取り組みによって実現可能となることで、混迷する木造住宅市場に少なからず刺激を与えることを祈りたいと思います。

平成21年1月22日 安井 昇
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