
[試験体の加熱面の様子]
これまで、準耐火構造といえば、せっこうボードを用いるのが一般的でしたが、今回、合格した仕様は、木材(スギなど)だけで構成されており、おそらく日本初だと思います。
これで、準防火地域の3階建て住宅の屋根を室内から見て木材あらわしでできることになります。軒裏の準耐火構造には垂木・野地板あらわしの仕様がH12建設省告示第1358号に位置づけられているので、それと組み合わせれば、屋根全体を木材だけてつくれることとなります。このJパネルは水平剛床をとれるので、これを野地板に使えば、構造性能・防火性能をあわせもつことになります。

[加熱中の試験体上部の様子]
屋根の準耐火構造には、30分間、壊れない(非損傷性)ことと、炎が貫通しない(遮炎性)ことが求められます。木材は外部から加熱を受けると表面に炭化層(断熱材の役割をする)を形成するので、内部への熱の侵入が低減され、厚さがあるとなかなか燃え進みません。今回のような板材では0.8〜1.0mm/分であることが知られています。この性質を上手に利用して所定の防火性能を確保したわけです。

[真剣に計測モニターをのぞき込む関係者(中央が三澤康彦さん)]
今後、試験を実施した性能評価機関内の性能評価委員会での評価を経て、国土交通大臣認定の申請、大臣認定書の取得と進んで行く予定です。そうなれば、実際の建物に使えるようになります。
今回の一連の防火技術開発は、三澤康彦さん、三澤文子さんを中心に、平成18-19年度国土交通省 住宅・建築関連先導技術開発助成事業費補助金「国産杉三層クロスパネルによる準耐火構造仕様の開発」、H20年度国土交通省 地域木造住宅市場活性化推進事業費補助金を獲得して、まずは様々な仕様での実験を繰り返し、今年度、大臣認定取得のための性能評価試験にこぎつけました。そのなかで、安井は防火技術指導など中心的な役割をさせていただきました。設計者と研究者がチームを組むことで、デザインと性能を同時にもつ新たな仕様を開発できる、よいモデルケースになったと思います。
さて、来月は、木材あらわし床の準耐火構造の性能評価試験も控えています。これに合格すれば、準耐火建築物の床・屋根・軒裏・柱・はり(柱とはりは燃えしろ設計する)を木材あらわしとして設計できることになります。これまでできなかったことが、先駆的な取り組みによって実現可能となることで、混迷する木造住宅市場に少なからず刺激を与えることを祈りたいと思います。
平成21年1月22日 安井 昇