東京23区の多くが準防火地域に指定されています。そこに3階建てを設計する場合、準耐火建築物にする必要があります。
この準耐火建築物、柱やはりをせっこうボードですべて覆ってしまう方法が一般的ですが、少し工夫(=建築基準法を勉強する)をすれば柱やはりを見せたり、軒裏の垂木や野地板をあらわしたりすることができます。
柱・はりをみせるには、燃えしろ設計という方法を使います。木材は燃えやすいと思っているかたも多いですが、断面がそこそこ大きいとなかなか燃え進まないという性質をもっています。だいたい1分あたり0.6(大断面のはりや柱)〜1.0mm(15mm厚程度の板材)で燃え進みます。
準耐火構造では45分の火災に対する安全性を確保する必要があるので、この間に燃える分+αを考慮して、集成材やLVLでは35mm、製材では45mmを燃えしろ寸法とします。ここで、製材が集成材等よりも大きいのは、燃えやすいわけではなく、節などの欠点の影響が製材のほうが大きいので、ある意味の安全率をとっているということです。
この燃えしろ寸法を除いた残りの断面で建物が壊れない(柱やはりの残った断面に生じる応力度が短期許容応力度を超えないことを確認する)ことを確認すればいいわけです。この考え方を使った建物を現在設計しています。
建物全体の重量にもよりますが、主となる柱が150mm角、150×180mm角ぐらいで成立しそうです。この柱が1間(1820mm)から2間(3640mm)間隔で見えてくるのであれば、あまり田舎っぽくならず、すっきりとした印象になるのではないかと思います。
春頃には着工する予定にしていますので、要所要所で紹介したいと思います。
この建物は構造設計を東京大学腰原幹雄氏らに御願いしており、「防火と構造の両面からのアプローチで、法令の範囲で木材をあらわしとした準耐火建築物がここまでできますよ」という良い事例になるよう進めていますのでどうぞご期待ください。
なお、この建物の各主要構造部の防火的なディテール例が、先日発売のチルチンびと別冊23号に紹介されていますのでご興味のある方は一度ご覧下さい。